詩を書く

共にあること

 共にあることのよろこびを 今かみしめている

 美しい心と共にあることの

 かけがえのない時間

 あなたの再生の時間

 オルゴールの響きの中で

 幾重にもふり積もった 思い出せない記憶の中で

 泣き笑い 悲しみ

 何度も生きなおして

 これはここにあるよろこび

 生まれたてのよろこび

Imgp3806
(キラキラ)

どこでもない場所の梯子

 万物の思いは不可能にあこがれる

 見られたことのない

 あたらしい何かとの出合いを求めている

 生の一瞬にすべてをかけて

 

 あなたという手の感触をたよりに

 前方へと歩を進める

 梯子のようなものが見える

 別世界への?

 

 永遠のようなその場所に

 よく見れば幾つもの梯子か架っている

 鉱物の耀きとなり

 柔らかな木洩れ日となり

 

 時は静止している

 いまここ

 どこでもない場所に

 また一つの喜びが生まれる

001

(2015 元旦の光り)

 

 

 

秘匿

 長い時に晒された見えないなにかが

 今なお生まれ続けている

 

 遍く物に入りこみ

 いのちを吹きこみ

 歓びにみち

 夢とともにあり

 宇宙のようにどこまでも果てのないなにかが

 

 息づくそれは 災禍に翻弄されようとも

 芯のようによりそい

 途方に暮れた人を気づかれぬまま励ます

 

 どこにあっても

 触れようとしても 触れられないけれど

 あたたかくも つめたくもないけれど

 優しさだけはなににも負けない

 

 のさり(さずかりし物) とだれかが囁いた

 大海に 天地に宿るもの

 鉱脈の下に眠るもの

 

 いったいどれほどの無限を甘受すれば

 生まれ変わるのだろうか

 それとも甘受し続けることじたいが

 生まれ変わりだろうか

 

 絶え間なく記憶を遡り

 未分化へと戻ろうとする

 もっと眠っていたいのだという

 夢の奥底へ

 

 だれにも気づかれたくないから

 頑なに 降りてゆく

 だれも見たことのない祭壇を求めて

 夢の向こう側へ

003
(朝陽)

 

☆ 第29回国民文化祭・あきた2014 現代詩フェスティバル参加作品

 

 

 

 

 

 

 

複眼

 種子のように 不意に飛んできて

 目の前の枝にとまる

 しばし見つめ合う 

 声もなく

 しかし何を伝えたがっているのだろう

 

 時が止まる

 夢の刻のよう

 眼下にはお堀の淡い緑

 その向こうには都会の夏

 

 長い年月を暗い場所で過ごし

 ようやく彩りある世界へ

 見つけた場所で羽を広げる

 閃きのかたちに

 

 「すみませ~ん」

 若いカップルから声をかけられ

 シャッターを押す

 光が華やぎ 溢れ出た

 

 先ほどの複眼は何処へ

 風が吹きはじめる

 葉がさやぎわたる

 時が幾重にも重なり合う

 私はいつからここにいたのだろうか

001

(光溢れて)   

静寂

 この私を生かしている

 この私の死

 千たびの生まれ変わり

 妖精たちよ

 

 闇に舞い 昼に安らう

 優しきものよ

 いつからいたのだろう

  ――有史以前から

 いつまでいるのだろう

  ――さあ、知らない

 何ものかと問えば

 存在ではないと答える

 この私の死よ

 生まれ変わりよ

 

 癒しの丘に

 一陣の風が吹く

 一輪の花が咲く

 見知らぬ風景があらわれる 

 思い出せない香気に満ちている

 

 懐かしいのは未知ゆえ

 かたちを生もうとするから

 しかし生まれたくないものは引力を帯びる

 

 風景の向こうへ

 足跡のない砂地へ

 場所でない場所の水をのみほし

 降りてゆく

 降りてゆく

 遡る

 

 古来の姿をした妖精たちが跳ねる

 ひそひそ話しは森に満ちる

 しーんと息づく

 やがて辺りは薄紫に染まる

006

(妖精たち)

 

 

 

 

 

 

  

  

 

 

  

 

 

数多の意思の集く

 夜に鏤められた無数の瞬きのように

 水面に戯れる星々のように

 ここにはありとある意思が訪れ

 終わることのない饗宴を繰りひろげている

 

 夢はかく語りき

 人の心を満たしたいのだと

 積もる雪より静かに拡がりたいのだと

 雪はかく語りき

 深き淵に空を届けたいのだと

 空はかく語りき

 私のキャンバスに色彩を溢れさせたいのだと

 

 花の紅

 鉱物の青

 溶け合いまた溶け合わず

 光の位相を求め止まない

 その姿は本当の自分を探すかのよう

 

 出合いこそが私なのだと

 すでに知られていただろうか

 だからこその静謐が希求されていただろうか

 

 数多の意思の集く

 いまここの歓楽に 夢は

 どこまでも細部に分け入り

 生命たらんとする

 虚空などどこにも見あたらない

 016

(南熊本駅近くの踏切横)

 

そして誰でもないきみへ

 数多の思いを

 流れる水に晒そう

 私が消え去るほどに

 純化されるよう

 

 思いは陽光を浴びて

 キラめいているけれど

 ほんとうに輝くためには

 幾つもの歳月が必要だ

 見えない光で瞬くためには

 

 そこここに生まれる動きは

 かつては何ものであったか

 往時 何ものかに成り急いでいなかったか

 頑なな寡黙を忘れがちでなかったか

 

 遥かな湖底と響き合うためには

 もっと知らない場所へ

 懐かしい時間へ赴こう

 そしてどこでもない場所へ

 誰でもないきみへ

015

(桜の木の下で)

 

 

 

白詰草の咲く防波堤

白つめ草の咲く防波堤の

向こうから

故郷のような風が吹いてくる

幾重にも連なる波とともに 

右手奥

とおく霞んでいるのはがれきの島

人々の思い集く

 

エネルギーの余波か

それにしては静かで優しい

人々の思念か このあたたかさは

生きよ 生きよと ささやく大気が

この地を包んでいる

昨夜も舞っていたものたちか

ここにあるのは

 

松林のところどころには 小さな芽と

せわしなく動きはじめる蟻らと

赤茶けた水たまりが

槌音も聞こえないまえに

風の声にさそわれている

頭上はるか ちぎれかけた雲は

日にかがよい 時にやすらう

波は変わることなく

律動をくりかえしている

056

(荒浜)

うまれる

 今受けた印象を

 おさなごのように

 くりかえし心にきざむ

 忘れないように というより

 そこにあるものに

 ふれたくて

 

 いつも意想外にやってきて

 きり果てのない扉をひらくもの

 わたしというここで

 

 また見つけたよ

 だれかがささやいた

 海はわらいさざめき

 つぎつぎに夢が生まれた

 

 向こうの壁に映る琥珀の光に

 世界のよろこびがあり

 今ここの鼓動に

 あたらしい時がながれはじめる

 記憶は幾重にもかさなり

 またうまれる時を待っている

008

(どこいこうか) 

 

  

つながり合う時

 ある人の死の刻に

 その人の夢を見る

 私が感じとったのか

 その人がやって来たのか

 

 2年前の3月 私は

 原因不明の高熱を続けた

 桜が散るころになっても

 それで 遠くの沿岸部へ出かけてみた

 

 いまここの私は

 見知らぬなにかの

 閃きなのかもしれない

 

 心を澄まそう

 無数の層から生まれる声を

 聞きわけるために

 

 切り刻み

 飾りつける

 続く日々の向こうまでも

 

 道なき山中の木立にて

 突如現れた鹿と目が合う

 呼んだのは私か

 

 思念をととのえる

 生命そのものによりそおうとして

 このつながり合う時に

017

(ノースショアにて)

 

 

 

 

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