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2017年12月

ぼくと魔法の言葉たち

 ぼくと魔法の言葉たち Life, Animated (2016年 アメリカ映画)

 冒頭部分、若者になったオーウェンが話すときのぎこちない笑顔が気になった。なぜ意味もなく笑っているのか…。しかし、フィルムが進むにつれ、そのことはあまり気にならなくなった。彼は自己表現が苦手なのだと思う。どう言えば相手がどう受け止めてくれるか、察することに困難が伴うのかもしれない。それでも努めて明るく振舞おうとしているように、私には感じられた。

 ディズニー・アニメの魅力溢れる登場人物たちのセリフが、障害を負った小さなオーウェンの内面を照らす光となり、彼に命を吹き込んでくれた。

 言葉は生命そのものであると感じる。生きているものたちの動作、表情、その中から不意に妖精のようにあふれ出す言葉たち、それは生命のとるひとつひとつの形象だ。そこにはいくつもの夢が生まれ、跳梁し、消える。イアーゴの口から出た言葉は、かつては誰かの願いだったかもしれず、また生きる喜びそのものが躍り出たのかもしれない。それが本当の、心からの言葉であるなら、なおさらのこと。だから、オーウェンは共鳴する。

 映画の終り、パリでのスピーチで、彼は、自閉症の人は人と話したがらないと思われているが、それは間違いだ、と明言する。実感による言葉である。彼が語っているのではなく、真理が語っているようである。聴衆はそのことを拍手で称える。

 一人暮らしを始めた頃から、彼はディズニーの登場人物のセリフではなく、自分の言葉を紡がなくてはならないことに気づいたのかもしれない。エミリーとの別れ、挫折やカナシミを経て、言葉は変容し、新しい生命となる。

 これからのオーウェンのことが気になる。どんな生を生きるのか。どんな言葉を紡ぎ出すのか。
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(精霊たちの棲む処)

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