« 青い童話 | トップページ | どこでもない場所の梯子 »

コスモスの影にはいつも誰かが隠れている

 藤原新也(2012).コスモスの影にはいつも誰かが隠れている.河出文庫

 繊細である。カメラマンだから、ではなく繊細だから人や風景をカメラに収めることができるのだと思う。

 大学生の頃『全東洋街道』(1981)を買って読んだことがある。イスタンブールから高野山までの旅の写真集である。それぞれの写真に言葉が添えられていた。写真にも言葉にも惹かれた。それで、直後にヨーロッパを旅した時、彼に倣って紀行文を書いたりもした。

 藤原さんの作品の良さは、自身や他者の心の襞がそのまま写真(風景)や言葉(物語)に置き換えられている点にある(少なくとも私にはそう感じられる)。

 見つめられているのは真実である。しかし同時に、相手の幸福を願っているので、真実は推測にとどめられるか、問われないままになることもある。

 墓参りに来なくなった別れた妻の思い、画家の奥さんの思い、などなど。

 読んでいて心あたたまるものがある。それは著者がいつも話者の心に寄り添っているからだろう。先入見なく、心に寄り添う。そのやさしさ、繊細さが読者の心に伝わる。

 文章を読んでいると、風景写真を見ているような錯覚にとらわれる。

022

(ひなたぼっこ)

« 青い童話 | トップページ | どこでもない場所の梯子 »

読書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/391404/58760706

この記事へのトラックバック一覧です: コスモスの影にはいつも誰かが隠れている:

« 青い童話 | トップページ | どこでもない場所の梯子 »