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2014年11月

Emma エマ

 ジェイン・オースティン(1815)/中野康司訳(2005).エマ.ちくま文庫

 心の奥深いところに触れてくる楽しい物語である。

 とても心地よい、とどうじに至るところで共感する。

 たとえばエマの心模様。ハリエットの幸福を願っての縁結びの計画は2度、3度とうまく行かず、却ってハリエットを苦しめることになるが、結果的に(必然的に?)彼女は幸福な結婚をする。そこに至る深い後悔、自責がエマの人格を成熟させてゆく。

 成熟に伴い、より正しく人々を見ることができるようになる。そして自分自身の気持ちも素直に見られるようになり、ナイトリー氏との幸福な結婚をもたらす。

 心の奥深いところに触れてくるのは、だれにでも身に覚えのある軽率であったり、思い過ごしであったりする登場人物たちの振舞、言葉、その描写が私たちの心に素直に語りかけてくるからだろう。

 とくにエマのそれ。なんという勘違い、でもそれは思い込みによるもの。はじめから特定のメガネでしか見ていなかったから、そのように見ようと思うから、そのようにしか見えない。

 しかし、錯覚があってこそ、真実は表れるもの。誤解を経なければ理解には至らないように物事はできている。

 人を理解するには、ある枠組み(角度から)見はじめ、その誤りに気づいたときに別の枠組みが生まれ、次第に真実へと向かう。ただ、多くの人は理解が性急なのだ。

 思い込みだけによって理解し(たと思い)、枠組みを変更することなく生きていく。でもそれは理解ではない。はじめの枠組みを見ているに過ぎない。

 人はいつでも何度でも自分の誤りに気づく。それが生まれ変わることであり、またこの世に生きることの意味である。

 エマとともに生きることの楽しさを、この書は与えてくれる。

008
(坪井川遊水公園の光)

 

 

 

 

あきたからの詩集

 秋田から詩集が届いた。

 『第29回国民文化祭・あきた2014 現代詩フェスティバル 入賞・入選作品集』

 小学生の部、中・高校生の部、一般の部から成っていて、良い作品がたくさんつまっている。

 素直な、生活感あふれる詩が多い。

 一般の部の作品は、震災後東北で初めての国民文化祭ということもあり、そこから生を見つめる作品が多い。何れも、読んでいて励まされるものがある。

 この詩集から、一ばんかわいい詩を紹介しよう。

 

          *          *          *

 

  しゅくだい

 

 きょうのしゅくだいは

 ぎゅうをしてもらうこと

 せんせいがいったよ

 なんだか

 おもしろいしゅくだい

 

 ままぎゅうしよう

 いいよ

 ままが

 てをおおきくひらいたよ

 わたしは

 おもいっきりとびついた

 がしゃあん

 ままとぎゅう

 ままいいにおい

 おはなみたいなにおい

 だいすきなにおい

 ままふわふわだねっていったら

 ほわほわだねって

 ままがいった

 なんだかいいきぶん

 こころがぽっかぽか

 ままありがとう

 もっともっとぎゅうしてほしいな

 

 なんだかこのしゅくだい

 いいなあ

 さいこうの

 しゅくだいだね

006
(2014.10.26)

 

人は生きているときに生きていないのはなぜか

 「人は生きているときに生きていないのはなぜか」

 この言葉を聞いたのはどこでだろう。

 ラジオか、夢の中か。

 この言葉を解釈すれば、人は忘我の状態においてこそ生きている、ということだろう。何かに純粋に没頭している状態、そこに「私」の意思が介在しているのではない状態、である。

 たとえば絵を画いているとき、対象そのものになっているとき。それは「私」が画いているのではない。絵が「私」を通して自己表現している。同じことは音楽でもスポーツでも仕事でも、要するにあらゆる活動において言える。

 そのとき、「私」はどこにも存在しない。

 あるのは表現されようとするものたちの意思だ。それはそれらの意思としてあるのではなく、存在すること自体のとる叫びだ。

 宇宙の表出されようとする表情だ。

 その表情を「私」たちは何とかしてとらえようとする。表情の裡にあるよろこびに惹かれて。

 そこに触れ得るのであれば死を厭わない。あるいは、そこに触れ得ることを死と言う。

 生きているとき、人は死んでいる。

 死とはそのような生を言うのではないか。

 そのような場所を、人は切望しているのではないか。

 だからこそのこの世の意味である。

011

(おおきなおつきさま)

 

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