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Emma エマ

 ジェイン・オースティン(1815)/中野康司訳(2005).エマ.ちくま文庫

 心の奥深いところに触れてくる楽しい物語である。

 とても心地よい、とどうじに至るところで共感する。

 たとえばエマの心模様。ハリエットの幸福を願っての縁結びの計画は2度、3度とうまく行かず、却ってハリエットを苦しめることになるが、結果的に(必然的に?)彼女は幸福な結婚をする。そこに至る深い後悔、自責がエマの人格を成熟させてゆく。

 成熟に伴い、より正しく人々を見ることができるようになる。そして自分自身の気持ちも素直に見られるようになり、ナイトリー氏との幸福な結婚をもたらす。

 心の奥深いところに触れてくるのは、だれにでも身に覚えのある軽率であったり、思い過ごしであったりする登場人物たちの振舞、言葉、その描写が私たちの心に素直に語りかけてくるからだろう。

 とくにエマのそれ。なんという勘違い、でもそれは思い込みによるもの。はじめから特定のメガネでしか見ていなかったから、そのように見ようと思うから、そのようにしか見えない。

 しかし、錯覚があってこそ、真実は表れるもの。誤解を経なければ理解には至らないように物事はできている。

 人を理解するには、ある枠組み(角度から)見はじめ、その誤りに気づいたときに別の枠組みが生まれ、次第に真実へと向かう。ただ、多くの人は理解が性急なのだ。

 思い込みだけによって理解し(たと思い)、枠組みを変更することなく生きていく。でもそれは理解ではない。はじめの枠組みを見ているに過ぎない。

 人はいつでも何度でも自分の誤りに気づく。それが生まれ変わることであり、またこの世に生きることの意味である。

 エマとともに生きることの楽しさを、この書は与えてくれる。

008
(坪井川遊水公園の光)

 

 

 

 

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