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2014年6月

老人と海

 ヘミングウェイ(1952)/福田恒存(1979).老人と海.新潮文庫

 初めて読んだ。

 1年以上前に、巨大な魚を描写した詩を書いた(このブログの「澪の街に」を参照)。その魚のイメージが甦ってきた。

 遠くへ、静かに私たちを誘うもの。

 〈ゆっくりと近づいてくる。くちばしが舷の外板にふれそうだ。それがあやうく舟のそばを通りすぎようとした。胴体はあくまで長く、厚く、広い。銀色に輝き、紫の縞をめぐらし、水中にはてしないひろがりを感じさせる〉p.107

 時の閾を超えてゆくもの。

 老漁師サンチャゴが魚に親しみを感じるのは、彼もまた時を超えた存在を感じたいからかもしれない。

 かつて存在したし、今も、どこにいても、いつまでもある親密なるもの。

 それと戦うことに、彼は罪悪を感じもするが、また喜びも覚える。

 ここには邂逅の歓びがある。

 畏敬する相手との交感。

 互いの孤独を感じ合うこと。

 現実への帰路にて、彼は魚を鮫たちに食い契られてしまう。今度は聖なるものを守ろうとする戦いのようだ。徒労に終ろうとも、守りたいものを守ろうと全力を注ぐ。

 私たちは、何を守ろうとして在るか。

 何を見つけたくて在るのか。

 ――どこにいても感じられる親密なるもの。

009

(親密だよ)

 

 

 

 

 

愛を出せ

 松尾キヌエさんが淳一さん美和さんから「愛を出」すことを教えてもらったように、私も松尾キヌエさんの本を読んで、多くのことを教わった。

 〈……以前の母ちゃんだったら、この子等のために夜もろくろく眠れずにどうしてこんな子が生まれたのだろうと思っていました。今は違います。この子等が母ちゃんを愛深くしてくれた。愛することを教えてくれました。以前の母ちゃんは愛の足りない女でした。この子等が私に『愛を出せ、愛を出せ』と言って磨いてくれます。子供に対してばかりでなく、父ちゃんに対しても全ての人々に対しても、母ちゃんは変わりました。相手の気持ちになって考えて上げられるようになりました。淳ちゃんと美和ちゃんのおかげで、人並の愛深い母ちゃんにならせて頂きました。淳ちゃんと美和ちゃんを両手にしっかり抱いて生きて行きましょう。どんな小さな虫喰い花でもいいから立派に咲かせましょう〉

                          松尾キヌエ『あなた達を産んでよかった!』より

 愛を出すとは?

 人との関わりの中で生まれる相手への思いを、自分の中に育むこと。それこそが私を生かしているものであることに、無意識に気づくこと。

 秘宝のように、守り育むこと。

 相手への思いは、時間とともに深化する。それを行動に移す際、立居振舞の中に完全に昇華させること。

 更に熟成させること。愛が自然で自由な行動となるよう、心に拡散させること、青いみずうみのように静かであること。

 相手を思うこと。

 相手を心底思うこと。私の心の奥底でその人を感じとること。私の中を、その人の笑顔でいっぱいにすること。

 その人は私に多くのことを教え促してくれる。私の知らない世界を雄弁に語ってくれる。

 他者からの語りかけは純粋な喜びである。

 それらを聞きとること。聞きとったことをまた返すこと。

 私のためではなく、その人のために。

021

(Pierre de Ronsard)

 

 

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