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田の客

 90歳の方の介助をしていている。

 物知りな方で、いろんな話題を提供される。

 「外で蛙が鳴いていましたよ」と言うと、もう蛙が鳴くようになったか、と驚かれ、さらに「蛙はたんぎゃくって言いよったです。田の客という意味でしょうかな」と仰った。

 なるほど、「田の客」とは面白い。蛙を敬っているようで、ユーモラスで優しい感じがする。

 調べてみると、古来蛙のことを谷蟆(たにぐく、たにかこ、たんがく)と言っていたらしい。

 〈白雲の 龍田の山の 露霜(つゆしも)に 色づく時に うち越えて 旅行く公は 五百重(いほへ)山 い去(い)きさくみ 敵(あた)守(まも)る 筑紫に至り 山の極(そき) 野の極(そき)見よと 伴の部(へ)を 班(あか)ち遣(つかは)し 山彦(やまひこ)の 答へむ極(きは)み 谷蟇(たにくぐ)の さ渡る極(きは)み 国形(くにかた)を 見し給ひて 冬こもり 春さり行かば 飛ぶ鳥の 早く来まさね 龍田道の 丘辺(をかへ)の道に 丹(に)つつじの 薫(にほは)む時の 桜花 咲きなむ時に 山たづの 迎(むか)へ参(ま)ゐ出(で)む 君が来まさば〉    高橋連蟲麻呂(万葉集巻六)

 「くぐ」「ぐく」は、谷間を潜(くぐ)り渡る、地を潜る、蛙の鳴き声とも言われている。

 私も、5月初めの深夜に幾度か谷を渡ったとき、蛙の声が静寂に響き渡っていたのを覚えている(萩往還マラニック250kmの部)

 たにぐく→たんがく→たんぎゃくと考えられるが、先の翁のように田の客ととった方が擬人的で楽しい。

 またいろんなお話をお聞きしたい。

020

(わが家の入口にて)   

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