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99%ありがとう

 藤田正裕(2013).99%ありがとう――ALSにも奪えないもの.ポプラ社

 著者の感性に注目したい。例えばこんな頁がある。

 

 〈僕が世界の中で一番怖いものは、海とサメ。

 2003年、13歳の女の子がサーフィン中、

 4.5メートルのイタチザメに左腕を一口で噛みとられた。

 体の血を60%なくし、1か月近く入院、

 だけど事件から1ヶ月後にはなんとまたサーフィンをしてた……。

 それ以上に衝撃的だったのが、彼女へのインタビュー。

 小さな13歳の女の子が、腕をサメに食いちぎられて言った言葉、

 「他の人じゃなくて、私でよかった」〉 p.68

 

 他の人じゃなくて、私でよかった、心からそう思う女の子に、純粋に信頼を覚えている。自分が怪我をすることで誰かの役に立ったのなら、それでいい。

 一方で、自分が病気になることで人に身体を委ね、世話を受ける、そういうあり方が念頭にある。

 重ねるのではなく、並置されている。すごい女の子がいると。

 著者は淡々と自分の境遇を顧み、表現する。とても素直だ。

 子どもの頃の話、ハワイでの就職のこと、現在のこと……。

 表現することの楽しさ、すばらしさが伝わってくる。

 その延長上に、表現できなくなっても、存在することの楽しさとすばらしさがあることを、十分に予感させてくれる。

 美しい本である。

028

(Waimea)

 

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