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ハツカネズミと人間

 スタインベック(1937)/大浦暁生訳.ハツカネズミと人間.新潮文庫

 原題は Of Mice and Men.スコットランドの詩人ロバート・バーンズの詩「ハツカネズミに」

  ハツカネズミと人間の このうえもなき企ても

     やがてのちには 狂いゆき

  あとに残るはただ単に 悲しみそして苦しみで

     約束のよろこび 消えはてぬ

 からとられたのだという。(文庫本訳者あとがきより)

 主人公の二人、ジョージとレニーは夢を持っていた。働いて稼いだお金で農家の老夫婦から小さな土地を買い、野菜を植え、家畜を飼い、人から指図されずに、幸せに生きるという。

  「『じゃ、話そう。いつの日かーーおれたちは金を合わせて、一軒の小さな家と二エーカーの土地を持ち、一頭のめうしと何頭かのブタを飼う。そしてーー』

  『そして、土地のくれるいちばんいいものを食って、暮らす』レニーは大声をはりあげた」p.23

 しかしその夢は実現しなかった。二人で、うまく働いていくことができなかったから。よき働き手ではあったが。運が悪かったのかもしれない。

 農場主の息子カーリーの妻の軽率のために。それは元はと言えばカーリーのせいだったのかもしれないが。兎も角レニーはやってしまた、自分のやったことの意味もよくはわからずに。

 レニーを守ることは難しいとわかっていたのだろう。だから、二人だけで暮らせるようにと、ジョージは思っていたのだが。

 レニーは無垢で、一人では生きていけなかった。それはレニーにもわかっていて、だからジョージに頼らざるをえなかったのだが。

 黒人の馬屋係クルックスは、自分の部屋に誰も入れたことがなかったが、レニーがはじめて入ることを許された。彼の人のよさを、クルックスは覚ったから。クルックスの心に灯がともされたから。

 一つの夢は消えた。だが、そういう夢を抱いて、げんに生きたことが、尊いのだと思う。クルックスにとっても、夢を共有した掃除係の老人キャンディにとっても、ものの道理のわかる、ラバ使いの名手スリムにとっても、そしてジョージにとっても。

 私たちのなかにある「レニー」を大切に守ることが、生きることではないかと思う。この世とうまくやっていくのではなく、奥にあるやさしさのようなものを、守り育むことこそが。

016

(ウミガメと人間) 

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