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つながりの作法

 綾屋紗月・熊谷晋一郎(2010).つながりの作法ー同じでもなく 違うでもなく.NHK出版 生活人新書

 綾屋氏は1974年生まれ、2006年にアスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)という名づけを得る。

 熊谷氏は1977年生まれ、脳性まひの電動車いすユーザー、小児科医。

 お二人には『発達障害当事者研究』、『当事者研究の研究』(どちらも医学書院)等の共著書がある。

 綾屋氏の生きにくさとは?

 〈自分の身体内部の訴えをバラバラに感じるだけではない。身体外部からの情報も、バラバラのまま大量に感じ取ってしまう。冒頭で述べたように私の場合、五感からの刺激を必要なものと不要なものに分けて、後者を潜在化させていくという作業がスムーズでないため、次々に大量に蓄積されてしまう情報によって苦しむ、ということが生じる。これを「感覚飽和」と名づけた〉p.18

 情報を細かく拾いすぎる「感覚飽和」ゆえに、行動のための選択ができず、フリーズしてしまう。自らの声も適切に聞き取れないため、「正しい発声」が困難となる。「他者」も、「私」も、うまく把握することができない。だから、「つながれない」。

 〈世界とつながっていない感覚が高じて、「はたして自分の感じていることは本当にあるのだろうか」と自分の感覚に確信が持てなくなり、「そもそも自分は確かに存在しているのか」「自分は何者なのか」という実存感覚まで危うくなっていく。にぎやかな情報の渦に溺れ、あふれる刺激の大海によりどころなく漂う私は、ずっと、とても、孤独だった〉p.42

 アスペルガー症候群という名づけを得ると、自分のことが客観的に分かるようになり、仲間にも出合い、少し生きやすくなる。それでも、その名づけに違和感を覚える。

 〈そもそも「アスペルガー症候群」の名づけの定義である自閉症の三つ組の特徴、すなわち「①相互的社会関係能力の限界 ②コミュニケーション能力の限界 ③想像力の限界」という専門家の言説はいかがなものか。なぜこの障害の定義は、外から見た判断を基準としているのか。「相互的社会関係能力」や「コミュニケーション」は二者の間に生じるものなのに、なぜその限界を一方のせいにできるのか。いったい「誰が」困って、これを障害と定義したのか〉p.92

 また、当事者コミュニティにも、ある種の抑圧、居づらさを感じるようになる。

 〈差異を過小評価すれば個の抑圧につながるし、差異を過大評価すれば連帯が損なわれる。いずれの場合もコミュニティに窮屈さや息苦しさを覚え、結局コミュニティを去り、ふたたび仲間も支援もない孤立した状態になってしまいかねない。ここで私たちは「違いを認めたうえでなお、つながる作法とは何か」という問いを抱えることになる〉p.99

 ここまで来ると、綾屋氏らの問いは、障害を超え、広くこの社会の抱える問題と地つづきになっていると感じられる。

 抱えられた問いは、「浦河べてるの家」、「ダルク女性ハウス」の実践に導かれ、当事者研究という形をとるようになる。それぞれの当事者ミーティングでの体験は、「つながりの作法」の模索に向かう。

 「つながりの作法」とは、つながりは更新されつづけるということを知っている人が増えることだと感じる。感じ方、見方が共有される、共感される、そしてそれらはつねに更新されている。互いの違いを認め、おいてけぼりを感じている人も認め、感じ、考え合う。

 それでも障害による生きにくさ自体は変わらない。

 〈弱さは終わらない。痛みの記憶は消えることはない。でも痛みが静かな悲しみに変わるということはありうるのかもしれない。それにはきっと何十年という月日がかかるだろう。それまでのあいだ、自分が話すときに相手の顔を見なくてもよく、相手が話すときにあいづちを打たなくてもよく、同じ話を何回も繰り返し話してもいい場所が、私には必要だ。それはこれまで「フツー」の世界で教わってきた「正しいコミュニケーション方法」とは正反対だ。これまで「フツー」の世界のなかで「居場所がなくてつながれないなあ」と私が思ってきたのは、無理もないことなのかもしれない〉p.212

 このお二人の身体感覚を、想像力によって体験してみたい。また、今年2月に出版された『当事者研究の研究』も読んでみたい。

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(見て、触れて、感じて)

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