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詩を読む会(35)

 8月31日(土)開催、詩を読みましょう(第13回)

 読まれた詩文の一部を紹介しよう。

          *          *          *

   木の実

                                茨木 のり子

 高い梢に

 青い大きな果実が ひとつ

 現地の若者は するする登り

 手を伸ばそうとして転り落ちた

 木の実と見えたのは

 苔むした一個の髑髏である

 

 ミンダナオ島

 二十六年の歳月

 ジャングルのちっぽけな木の実は

 戦死した日本兵のどくろを

 はずみで ちょいと引掛けて

 それが眼窩であったか 鼻腔であったかはしらず

 若く逞しい一本の木に

 ぐんぐん成長していったのだ

 

 生前

 この頭を

 かけがえなく いとおしいものとして

 掻抱いた女が きっと居たに違いない

 

 小さなこめかみのひよめきを

 じっと視ていたのはどんな母

 この髪に指からませて

 やさしく引き寄せたのは どんな女(ひと)

 もし それが わたしだったら・・・・・・

 

 絶句し そのまま一年の歳月は流れた

 ふたたび草稿をとり出して

 嵌めるべき終行 見出せず

 さらに幾年かが 逝く

 

 もし それが わたしだったら

 に続く一行を 遂に立たせられないまま

 

 

 

   花

                          槇 さわ子

 生まれ変わるとしたら

 何にになりたい?

 そんな他愛いないはなし。

 

 そういへば

 花に見つめられたことがある。

 話しかけられたこともある。

 お地蔵さまのあしもと。

 農家の物置小屋の裏手。

 沼のほとり。

 

 どれもみな

  花!

 声をあげずにいられないほど

 みずみずしく咲いていた。

 

 生きているときに

 よほど強く

 花になりたいと願った人なのか。

 生きているときに

 自分の持っている根の毒が

 しみじみと

 やりきれなかった人達なのか。

 

 美しければ美しいほど

 根に

 こころ奪われる

 花。

027

(美しいほどに)

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