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Everything and Nothing

 J.L.ボスヘス作/鼓直訳.創造者.岩波文庫

 〈彼のなかには何者も存在しなかった……ただ、わずかな冷気のようなもの、だれにも夢みられたことのない夢しか存在しなかった。最初、彼はすべての人間が自分と同じなのだと信じたが、この空白感をふと口にしたとき相手の顔に浮かんだ怪訝そうな表情を見て、思い違いをしていたことを悟り、個は種から逸れてはならぬという思いを深くした〉p.76

 〈わたしもまた、わたしではない……お前がその作品を夢みたように、わたしも世界を夢みた。わたしの夢に現われるさまざまな形象のなかに、確かにお前もある。お前はわたしと同様、多くの人間でありながら何者でもないのだ〉p.81

 私は何者でもない。だからこそ、創造に参与しうる。

 創造とは?

 私の意思とは無関係に(というより私の意思が存在しないのだが)存在しようとする、宇宙のあり方そのもの。いたるところに生まれる小さな意思は、奔流を待ち、遭遇し得ず、なお生まれつづける、そのあり方そのもの。

 微かに穿ちつづける。穿ちつづけることが生きるということで、生かされている意味で、何者でもない私たちは、そのように夢をみる。

 だれにも夢みられたことのない夢をみようとして。

037

(Kailua)

 

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