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てんとろり

 笹井宏之(2011).てんとろり.書肆侃侃房

 笹井宏之の第2歌集。

 しずかに、しずかにこころに浸透してくるのは、伝わってくる思いの、私との近接性によるのか。

 

 月足らずで生まれたらしい弟を補うようにつきのひかりは

 

 冬空のたったひとりの理解者として雨傘をたたむ老人

 

 美しい名前のひとがゆっくりと砲丸投げの姿勢にはいる

 

 生きてゆく 返しきれないたくさんの恩を鞄につめて きちんと

 

 砂時計のなかを流れているものはすべてこまかい砂時計である

 

 こどもだとおもっていたら宿でした こんにちは、こどものような宿

 

 奪われてゆくのでしょうね 時とともに強い拙いまばゆいちから

 

 うつくしいみずのこぼれる左目と遠くの森を見つめる右目

 

 からだじゅうすきまだらけのひとなので風の鳴るのがとてもたのしい

 

 実像はここまでですあとはもう好きなところをお刺しください

  

 生きようと考えなおす さわがにが沢を渡ってゆくのがみえて

 

 わたしだけ道行くひとになれなくてポストのわきでくちをあけてる

 

 空のおおよそ半分ほどを占めているひかりの犬のうすい肉球

 

 大人には見えないものを渡されてひとり、優しいバス停に立つ

 

 たましいのやどらなかったことばにもきちんとおとむらいをだしてやる

 

 木の間より漏れくる光 祖父はさう、このやうに笑ふひとであった

 

 雨といふごくやはらかき弾丸がわが心象を貫きにけり

 

 花冷えの竜門峡を渡りゆくたつたひとつの風であるわれ

 

 読んでいて、比喩、つまり物の見方(生き方)に、解放される感じがする。彼に見える世界が、彼に生き方を教えるように、ことばが生まれ、生まれたことばが読み手のこころに拡がる。

 優しく、清らかなたましひである。

025

(ハイビスカス 4000種類以上あるらしい)

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