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家守綺譚

 梨木香歩(2004).家守綺譚.新潮社

 主人公の名は綿貫征四郎、新米の精紳労働者で、収入が覚束ない。そこへ、高校の時に亡くなった友人の高堂の家の人から、留守の間の家守を頼まれる。渡りに舟。その家での1年余に亘る暮らしぶりが語られる。

 家にはさまざまな植物の生える庭と、湖からの疏水を引いた池がある。庭の百日紅から懸想されたり、亡くなった高堂が床の間の掛け軸から時々現れたり、なついてきたので飼うことにした犬のゴローに助けられたり、河童が池に迷い込んだり、小鬼がふきのとうを摘んでいたり、桜の花から暇乞いをされたり、山の和尚と碁を打ったり、信心深い狸を助けてあげたりetc.、自然の「気」たちと触れあう様が描かれる。

 そこでは交歓が自然と行われている。その家(場所)が良いのかもしれない、あるがまますべてを受け入れる征四郎の性質も一役買っているのかもしれない。ゴローは「仲裁犬」らしいのだが、征四郎も、自然の「気」たちを無意識に「受容」することで、そこに流れを生みだしている。

 受け入れる、聴く、という創造性。

 そこにある感受性。

 征四郎の性質はまた作者の性質でもあるのだろう。文体が優しく、あたたかく、人の心にすっと入ってくる感じがする。心が自在なのだろう。同じ作者の『西の魔女が死んだ』の映画を見た時も同じ感覚を持った。

 とても良い本だと思う。一番、かもしれない。

009

(こんにちは)

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