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重力ピエロ

 2009年。原作:伊坂幸太郎、監督:森淳一。

 人はさまざまな不遇や悲しみの中で生きている。それに押しつぶされてしまうとすれば、重力のせいだ。

 しかし、人に喜びを与えるピエロは、重力などまるで感じないかのように軽々とした身のこなしを見せる。子どもの頃間近に見た煌めく映像。

 不遇はだれのせいでもなく、世間のせいでもなく、自らの心の在り方だった。そのことに、春はいつ気づいただろう? 壁にグラフィックアートを画きながら? 生家に火をつけたとき? それよりずっと以前に、自分の絵の才能に気づいたとき?

 人からどう見られるかではなく、自分がどう考えるか? それがどう生きるかということだ。その考えは、幼いころから人に蔑まれて生きてきた春にとっては、自然と身に着いたことではなかっただろうか?

 「自分で考えなさい」。途に迷ったとき、春のお父さんは神様に相談しようとして、神様にそう言われたらしい。

 その通り。「あなたが見たいと思う世界の変化にあなたがなりなさい」(ガンジー)。映画はそうも言っていた。

 春のしたことは正しかったか? 春は、正しいとは思っていないだろう。身を苛むほどに苦しいのに違いない。それでも、やらざるを得なかったからやった。

 春には泉水という兄がいた。「どちらも spring」。

 分身のような存在。苦しみも悲しみも、分かち合いたいと願う。見守っていてくれなくても、分かってくれなくてもよかったかのしれないが、兄はいつも見守り、理解してくれた。同じ場所で、同じ時を過ごした、もうひとりの私として(本当は、まったく別の人格なのだけれど)。

 背負い、苦しみ、それでも少しずつ希望を見出して、やがてはあの軽やかなピエロになることを夢見て、春は生きていくだろう。目に見えるこの世界は光に満ちているのだから。

http://www.youtube.com/watch?v=5KZffS5qKrc

009_2   

(Spring has come!)

 

 

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