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詩を読む会(25)

 今日12月22日(土)、窓外に小雨の降る中、「詩を読みましょう(第9回)」を開催した。

 いつものように、読まれた詩を紹介しよう。

          *          *          *

  紫野 

 迷った男が泊まっていると

 いくぶん女を取り戻し

 床を抜けると米をとぎ

 十年むかしの菖蒲の皿を思い出しては探している

 さびしいですかと尋ねられれば

 臆面もなくさびしいと

 云ってるそばから蠅を捕らまえ

 老婆へと老婆へと移り変わって暮らしてゆく

 こらえきれないわけではないが

 もう少し泊まっていくがいい 

 

  

 光はみえるのだろうか

 闇の中に突き進んだ時間

 それは取り返しのつかない闇

 一筋の光でもいい

 果てしない闇につぶやく

 

  手紙

 何故、君は人を信じるのか

 疑いは絶望のみを生み

 信じればこそ

 光がさすことを君は知っているんだね

 君の信頼に

 報いようとする

 僕らがいるよ              (パピーウォーカーさんのブログより)

 

  優しい冬

 金魚は凍てつく庭先の鉢の中で、2回目の冬を迎える。朝支度の台所の窓には藍色から青へのグラデーションを背景に、三日月と明星が神秘の光を放つ。

 職場へと走る車のフロントガラスの汚れが気になり、何気なくワイパーのスイッチを入れる。ウォッシャーの水はワイパーの動きと共に、あっという間にシャキシャキと凍った。

 来た。万物を懐に抱き、生命を蓄える冬が来た。青若い久住高菜も、この寒を越え成長する。冷たく厳しい冬は、水晶の瞳で遠くを見つめ、優しくほほ笑んでいるのだ。冬の次には、必ず芽吹きの春が来る。     (毎日新聞朝刊「はがき随筆」より)

          *          *          *

 紫野の情感の面白さ。はうつ病を再発した身内のことを思って書かれたもの。手紙は盲導犬候補の子犬に対して書かれたもの。優しい冬にある生命への親近。

 いずれもすばらしい詩である。生命を見つめている。感じられるそれぞれのまなざしに心の奥の方から力が湧いてくる。

 紫野という題は、万葉集、額田王の歌「茜さす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」から採られたもの?

017

(やさしい雪だるま)

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