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詩を読む会(23)

 今日、小雨のぱらつく中、「詩を読むましょう(第8回)」を開いた。楽しいお話し会になった気がする。今回も、読まれた作品を幾つか紹介しよう。

 

 

 富士を見た

 富士山を見た

 赤い雪でも降らねば

 富士をいい山だと賞めるには当たらない。

 

 あんな山なんかに負けてなるものか

 汽車の窓から何度も思った回想

 尖った山の心は

 私の疲れた生活を脅かし

 私の眼を寒々と見下ろす。

 

 富士を見た

 富士山を見た

 鳥よ

 あの山の尾根から頂上へと飛び越えて行け

 真紅な口でひとつ嘲笑ってやれ

 

 風よ!

 富士は雪の大悲殿だ

 ビュン、ビュン吹きまくれ

 富士山は日本のイメージーだ

 スフィンクスだ

 夢の濃いノスタルジヤだ

 魔の住む大悲殿だ。

 

 富士を見ろ

 富士山を見ろ

 北斎の描いたかつてのお前の姿の中に

 若々しいお前の花火を見たけれど

 

 今は老い朽ちた土まんじゅう

 ギロギロした眼をいつも空にむけているお前

 なぜ不透明な雪の中に逃避しているのだ

 

 鳥よ風よ

 あの白々とさえかかった

 富士山の肩を叩いてやれ

 あれは銀の城ではない

 不幸のひそむ雪の大悲殿だ

 

 富士山よ!

 お前に頭をさげない女がここにひとり立っている

 お前を嘲笑している女がここにいる。

 

 富士山よ富士よ

 颯々としたお前の火のような情熱が

 ビュンビュン唸って

 ゴウジョウなこの女の首を叩き返すまで

 私はユカイに口笛を吹いて待っていよう

                           (林芙美子『放浪記』より)

 

 

  あの破壊は他からの暴力だろうか (抜粋)

 

 わたしらの夜をついに鋳つぶしにきたのか。

 むじひ罰しに。

 くされた球茎に気づかぬわたしらを、

 矯めなおしにきたというのか。

 そう言いたくなるのもわからんではないけれど、

 真相はこうなのだ。

 

 宇宙がちょっと身じろぎ、

 はずみで

 聖人堀緑地のいけがきの

 真っ赤に熟した

 ヒマラヤトキワサンザシの実がひとつ、

 落ちてころげて、

 海にぽちゃんと入り、

 かすかな漣をつくっただけの話だ。

 じつに無ほどに小さな漣を。

 

 真っ赤な

 ヒマラヤトキワサンザシの実は、

 わたしのなかに熟し、

 ある日、ひと粒が

 ゆくりなく宇宙の海に落果した。

 おのずからの暴力。

 かすかなその漣で世界が絶えることもあること。

 

 とりかえしのつかぬ罪は――

 それらをこばむ無知。

 宇宙の海はわたしのからだのなかに、

 うねりただよう。

 あがなえぬ海。

 かすかなその漣で世界が絶えることもあること。

 

 とりかえしのつかぬ罪は、

 語りとどかぬ、予感しないことば。

 それが盤古をあやめる大罪となった。

                       (辺見庸、詩集『眼の海』より)

004

(夜明けの光)

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