« 詩を読みましょう(第7回) | トップページ | 詩を読む会(22) »

詩を読む会(21)

   今日、詩を読む会(第7回)を開催した。より楽しく、充実した時間だったように思う。この会は1年前に始めた。当初は「詩を通してのおしゃべり会」のつもりだったが、けっこうまじめに詩を書いたり感想を伝え合ったりもしている。

 差し入れとかもあって、お茶会みたいな感じでもある。そういうのが良いと、私は感 じている。ざっくばらんに、いろんなお話しに興ずる、それが「表現」することの楽しさにつながれば良いと思う。

 いろんな詩を読んでいると、作者の「この世の感じとり方」の違いがよく伝わって来る。その良し悪しではなく、その違いが、私には面白い。

 今回も持ち寄られた幾つかの作品を紹介しよう。

  

  

                              田中裕子                  

朝露に浅い時間が反射する中を

軽々と自転車にまたがり

静止の姿勢で

急坂を下りていく少年を見た

彼と時間はよくつり合っていて

  

積み重なった時間のむこう

押し込まれたものを掘り出すために

ねじれてしまった背中の

どこを伸ばせばいいのだろう

  

背を割った抜け殻が

みかんの木陰にとまっている

またからっぽになるまで

瀑布のように放出し続けるために

まっすぐに飛んで行ったのだろう

殻を脱いでも

固い骨格の中でしか生きられない虫の

かしこさと悲しみで

しばらくあたりはしんとする

  

蝉のように

まずは風を通すことから

 

 

  木は旅が好き

                              茨木のり子

木は

いつも

憶っている

 

旅立つ日のことを

ひとつところに根をおろし

身動きならず立ちながら

 

花をひらかせ 無私を誘い 風を誘い

結実を急ぎながら

そよいでいる

どこか遠くへ

どこか遠くへ

 

ようやく鳥が実を啄む

野の獣が実をかじる

リュックも旅行鞄もパスポートも要らないのだ

小鳥のお腹なんか借りて

木はある日 ふいに旅立つ――空へ

ちゃっかり船に乗ったのもいる

ポトンと落ちた種子が

〈いいところだな 湖がみえる〉

しばらくここに滞在しよう

小さな苗木となって根をおろす

元の木がそうであったかのように

分身の木もまた夢みはじめる

旅立つ日のことを

幹に手をあてれば

痛いほどにわかる

木がいかに旅好きか

放浪へのあこがれ

漂泊へのおもいに

いかに身をよじっているか

013_2

(むこうに空港があるんだろうか) 

« 詩を読みましょう(第7回) | トップページ | 詩を読む会(22) »

詩を読む」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/391404/46822974

この記事へのトラックバック一覧です: 詩を読む会(21):

« 詩を読みましょう(第7回) | トップページ | 詩を読む会(22) »