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〈いのち〉のメッセージ

 若林一美(2008).〈いのち〉のメッセージ.ナカニシヤ出版

 著者の若林氏は、大学で教育学を専攻され、「ちいさな風の会」(子を亡くした親の会・1988年設立)の世話人をされている。ここには、授業や相談を通して考え続けてこられたことが記されている。

 言葉がやさしく、飾りがない。スケッチをするように、対象に向き合い、共感をもって語られる。いじめ被害の体験から自己を肯定するにいたった人の話し、レイプ被害から自尊心をとり戻し、同じ被害に遭った人びとにやさしさを与えた人の話し、ごんぎつねの話し、ピーコさんの深い体験、シシリー・ソンダースの愛の話し、など。

 たとえば次のように、

 〈ロスは末期患者たちとの数多くの出会いを重ねるなかで、社会を変える力も、暗いトンネルを抜け出し光を見つける勇気も、すべて心のなかにある、という結論に至ったという。

 社会の仕組みに不都合を感じたら、それを感じた人が発言していかなければ、社会は変わっていかない。同じように、苦しんでいる人たちも、とてもつらいことではあるが、自分自身の恐れ、罪意識、恥じ、無力さ、打ち砕かれた自尊心といった見たくない自分自身の姿を認めることからしか新しい自分は始まっていかない。自分を信頼し、自分に誠実に向き合うことで、新しい道も開けてくる。

 自らの死を認めるなどということは容易なことではない。死という事実を認めることこそが敗北であり、それを認めてしまったらすべての希望が消え失せてしまうようでもある。しかしロスは末期患者たちとのインタビューをとおし、「希望」の中身は変わるかもしれないが、人は最後まで希望を持ちつづけるものだと確信しているという〉p.147

 この世がよりよい社会に変わっていくために、努力を続けた生を慈しみ、敬愛をもって描き出される。

Himeshima

(長崎鼻より姫島を臨む)

 

 

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