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詩を読む会(10)

 続けて(詩と感想の紹介)

 

  栄光なき兵士達に捧ぐ

 きみはいつも笑っていた

 黄ばんだ前歯はいつも乾いていた

 悲しいことなんてまるでひとつも知らないみたいに

 きみはいつも笑っていた

 

 とある夏の日の午後

 陽炎でぼやけた海岸線を僕と君はオートバイを走らせていた

 二人ともアルバイトをずる休みして

 生暖かい風が心地よく

 目的地まで後僅かのその時 突然の通り雨が

 僕らは鉄塔の影で雨宿りをした

 「やっぱ雨ぐらい降ってくれなきゃ張り合いないよな」

 君はそう言って笑うと、ポケットからしけた煙草を取り出し

 とても嬉しそうに火を点けるのだった

 

 行き先も分らず約束さえすることが出来ないくせに

 でっかい夢ばかり見ている僕らに

 「そんなんじゃだめだ」と誰もが言うけど

 僕らはただ楽しんでいたいだけなんだ

 「負けたくないのなら とにかく金を稼ぐ事だな

 話はそれからだ 青臭いガキどもめ!」

 そんな言葉に胸を痛める夜もあったけど

 僕らはただ笑いたいだけ

 心の底から笑いたいだけなのさ

 

 悪い予感と不安な未来に怯え続けるそんなタチの悪い日々

 なかなかベッドから起き上がろうとしない僕を叩き起こす着信音

 「今からまた旅に出るよ おまえも来ないか?」

 君は相変わらず元気な声でそういった

 そしてそれが最後に聞いた君の声だった

 

 君は帰って来なかった

 君は帰って来れなかった

 もう誰も行く事のできない道という道の果てへ

 たった一人で君は旅立ってしまった

 あの夏の午後のような

 陽炎でぼやけた路面の上を

 

 あれから数ヵ月後 不意につけたテレビニュースの中

 イラク兵の自爆テロにより死んだアメリカ人の名前が読み上げられた

 だけどニュースキャスターの誰一人として読み上げる事はなかった

 アメリカ人によって殺された イラク兵たちの名前を

 

 いつの日だって変わりはしない

 強いものが正しくて 弱いものが間違っているんだ

 そんな矛盾に頭を抱えるとき

 僕はいつだって君の笑顔を思い出す

 

 栄光なき兵士達よ あなた達はどんな地獄を目の当たりにしたというのか

 栄光なき兵士達よ あなた達はどんな楽園を思い描いていたというのか

 守るべきものは何だったのか 愛すべき人は誰だったのか

 もし、あなた達を敗北者と呼ぶのなら

 この世に勝者なんて一人もいない

 この世に勝者なんて一人もいないさ

 

 十二月 街はすっかり色気づき

 偽物のクリスマス・ツリーに 3分40秒のランプが溢れかえる

 もうまるで何年も前の出来事かのように 誰一人として語りだす奴はいない

 遠い空の下 たくさんの名もなき人達が死んだ事

 そして君の事を

 

 風に晒され 北極星さえ凍える夜

 どんな悲劇も過去というごみ箱の中 ひねって捨てられてしまう

 栄光なき兵士達よ どうか今夜僕に力を与えて

 今夜誰よりも大きな声で歌ってやりたいんだ

 栄光なき兵士達よ

 栄光なき兵士達よ

                                    (町田 直隆)

 

 感想・・散文的なのは朗読のために書かれたから? 「テレビニュース」としない方が良い、自国の報道とはそういう偏りをもつものだから。その報道の偏り自体が問われているのでは? 海外で起きた災害、事故、事件に際し、「日本人の生存者は…」という報道姿勢に違和感を覚える人は多い。

Nagasakibana

(国東半島 長崎鼻にて) 

 

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