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誰でも手話リンガル

 松森果林(2010).誰でも手話リンガル.明治書院

 「手話リンガル」とは、「手話」と「バイリンガル」を組み合わせた著者の造語。

 1人でも多くの人が、かんたんな手話で良いから話せるようになったら、そういう社会になったら、との願いが込められている。

 〈そう、この本は聞こえる・聞こえないに関係なく、幅広いコミュニケーションを楽しめる「手話リンガル」を目指す本なのです〉 p.2

 私も手話を習ったことで、この言語の面白さがよくわかるようになった。たとえば、人によって、地域によって表現が違うので、個性がストレートに表れる。顔の表情が最重要なので、全身で何かを表現する方法が身につく。遠くでも、ガラス越しでも、水中でも、相手が見えている限り会話できる。伝えたい気持ちにより表現するので、感情がより直接に伝わってくる、など。

 〈静かなのに、にぎやか!

 聞こえる友人が、聞こえない人の集まりに参加した時の感想です〉 p.16

 かんたんな手話表現が100頁近くにわたって紹介してある。とても分かりやすい。なぜそういう表現をするのか、理由が分かると面白いし、応用が利く。

 「番外編」では、私の習ったことのない「ジンジャーエール」「チューハイ」「ワンパターン」「アイラブユー」などの楽しい表現も紹介してある。

 〈聴力を失いつつあるとき、私は日記をつけていました。周囲とのコミュニケーションが断たれていく中で、うまく吐き出せない思い、、伝えようのない辛さや苦しみを、すべて日記帳にぶつけていたのです。

 何年かぶりに開いてみると、

 「聞こえたい」「普通に戻りたい」「せめて人の声だけでもいいから、聞こえるようになりたい」

 そして、

 「本当のコミュニケーションがしたい…」こんな生々しい言葉がたくさん綴られていました。

 本当のコミュニケーション――

 人はコミュニケーションなくしては生きていけないと言われます。それは相手に自分のことを知ってもらう安心感、相手を思う気持ち、理解し合える信頼感、認めてもらえる喜びがあると、「自分ひとりじゃない」という実感が湧くからでしょうか。

 コミュニケーションって、魂と魂の響き合いなのだろうなって思います。

 ……

 手話の世界には、無表情で交わす言葉や目を合わせずに交わす言葉は存在しません。空間を巧みに利用し、表情豊かに瞳を合わせると、感情がじかに伝わるのです。

 魂と魂が響き合うコミュニケーションが増えれば、きっと私だけではなく多くの人にとって、ストレスや誤解の少ない、温やかな社会になるのではないでしょうか〉 p.167-168

 私も、著者と同じように、この言語が少しでも多くの人に話されるようになることを願っている。

 そして、この言語は本によってではなく、できるだけ多くのろう者と触れあうことによって、おたがいの心を通わせることによって、ろう者の立場、社会的ハンディを知ることを通して、身につけるのがよいにちがいない。

Reincarnation

(表情豊かに ^^)

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