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詩を読む会(2)

 つづけて、持ち寄られた詩集より。

   くも

 空が青いから白をえらんだのです

 ** 奈良少年刑務所詩集(寮美千子編)より、受刑者A君の詩。印象深い詩。「えらんだのです」という言葉にさまざまな思いが込められている。白いくもは亡くなったおかあさんのイメージ、あるいは自分自身がくもと一体になった感じ、青い空の下でがんばって生きていくというメッセージ、などなど。

   その輝きを見つめるために――ある出会いの日に

 光はまっすぐ降りてくる

 あなたには

 絶え間なく 否応なく 防ぎようもなく

 あなたが俯く地の赤さが

 空の青を引きよせるのだ

 その光を人が見ることはない

 それが私に、見えた、見える、見えている

 なぜだろう

 どうしてあなたの前で

 自分自身の渇きを癒すかのように

 その涙を見つめているのだろう

 その輝きに魅惑されているのだろう

 

 目のまえで止まったように落ちていくのは

 非在、それとも存在

 光、それとも翳

 (手を伸ばすことはできない)

 揺らぎやすい天秤に耐えかねて

 またひとしずく、

 美しい瞳をあふれ夢のようにゆっくりこぼれ落ちていく

 悲しみの時間を

 まるで歓喜のように引き延ばしながら

 こぼされる、ではなく、こぼれていくという痛苦

 (手を伸ばすことはできない)

 涙自身のかすかな意志

 私の真芯を

 しんとすりぬけていく か細い天の柱

 

 あなたには生誕から

 まっすぐかかりやまない重力がある

 今落ちていく光は

 どんな言葉よりも鋭く真実を教えてくれる

 一つずつは空気の糸のように繊く

 気づかれもせず

 死ぬ日までふりやみもしない

 ときに悪意のように束ねられ

 あなたが神話の奴隷のように背負うしかない

 光のない真夜中もあるだろう

 こぼしてもこぼしても

 重力を洗うことができない悲しみの時はきっと

 世界の底で魂の衣服を砂でこすりつづける

 その無数の夜々を映しだし

 あなたの美しい瞳からふるえながら

 またこぼれていく光

 小さなちいさな「すべて」

 

 誰が知ろうとしてきたか

 そのたびに

 あなたが見上げられない天の光が

 とうとくそこに蒐められていくことを

 今日初めて会った私も

 あなたの涙に遥かから導かれてきた

 私たちが生まれ落ちた

 この冷たい石の世界に

 こぼされる、ではなく、まっすぐこぼれていく意志で

 生きる歳月の形のままに穿ち、創造した

 あまりにも繊細な水脈 をわれ知らず辿り

 今ここに辿り着いた

 あなたに見えないまま落ちつづける

 その輝きを見つめるために

 ** 河津聖恵「ハッキョへの坂」より。人形劇(紙芝居?)風の作者の女性は、「こぼされるでは、ではなく、こぼれていくという痛苦」がとてもよくわかると、声を震わせておっしゃった。読んでいてとても胸が苦しい感じがした、とは アイシタイ・・・の作者。「魂の衣服を砂でこすりつづける」という表現がとてもいい、境遇ゆえの苦しみに生きる人に寄り添う意志を感じる、と高校文芸部顧問の詩人。重力とは、生きる上で否応なく背負うもの、その痛苦に降りてくる光は愛、「小さなちいさな『すべて』」を見つめる、限りなく優しい、ある思いが、波動のように伝わってくる。

 (つづく)

029

(石巻市の高台の住宅地にて)

 

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