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生命そのもの

 河津聖恵さんの詩集『ハッキョへの坂』を読み、とても共感するものがあったので、ブログ「詩空間」にコメントをさせていただいた。そのご返答も、詩同様に、とても適切で丁寧だった。それで、その内容に関して、少し考えたことを記してみる。

 詩空間 http://reliance.blog.eonet.jp/ (とても良いブログです)

 数多の思いを感受したくて私たちは生きている。

 なぜ私たちは他者へと向かうのか。共感したいからだけではなく、そこで未知に出会い、違和を感じ、翻弄されたいから。おそらくはそれが生きることだから。

 私は私が私でないと感じられる瞬間にたしかなよろこびを感じる。そのときに出会っているのは「生命そのもの」(プルーストの小説に出てきた言葉 : la vie elle-même)と感じられる。

 河津さんは同じプルーストの言葉「無意志的記憶」を思い出され、その瞬間を「無意志的状態」とおっしゃった。その受動を経て、私たちにひらかれるのは「生命そのもの」とも呼ぶべきもの、とも。

 私が私でないとは、まさに「無意志的状態」である。その受動を経て、私たちに「生命そのもの」はひらかれる、そのように私も実感する。

 私は私でないと感じるのは、そのように感じたいから、そのように感じたいのは、私は他者でありたいと願うから、かもしれない(私は私ではない=私はすべてである)。

 「一粒の麦が地に落ちて、死ななければそのままだが、死ねば多くの実をもたらすだろう」という聖書の一節も、同じことを言っている。私の死とは、私が私でないすべてになることを言う。

 JE est un autre.(私とは一つの他者である) という A.ランボーの言葉も、同じ様なことを言っている。それは西田幾多郎の「主客合一」とはどう違うか。

 あるキリスト者は「自己中心性から少しでも解放されるために祈る」と言った。「死とは生である」という言い方も同様である。

 『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)に出てくるゾシマ長老の兄マルケールの少年の頃のエピソード(死の直前の悟り)にも、同じ考えが感じとられる。

 私が私でないと感じられる、それがよろこびであるのは、そのように、私はすべてであると感じられるからである。

 「生命そのもの」とは、そのように生きる(思考する)私たちを、そのように生かそうとしている何かである。

 私は、それを言葉で表現したい。

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(鶴見岳と日矢)

 

 

 

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思考」カテゴリの記事

コメント

ブログをご紹介下さり、ありがとうございます。
『ハッキョへの坂』の内容を敷衍して、とても大切な自己─他者論を展開していただき、こちらこそ触発されました。

「が私でないと感じられる、それがよろこびであるのは、そのように、私はすべてであると感じられるからである。

 「生命そのもの」とは、そのように生きる(思考する)私たちを、そのように生かそうとしている何かである。」

そのような生命の感知が可能になるために、私たちは生きて学び感じているのであり、歴史も社会もまた存在しているのではないかと思いました。

ありがとうございます。
初めて河津さんの詩を読んだとき、何かがすーっと入ってきた感覚がありました。言葉のひとつひとつが的確で、イメージが豊かだからかもしれませんし、河津さんに感受されいる「何か」のせいでしょうね。

私は不勉強なので論理的には緩みが多いです。うまく論が展開できないのは、まだ核心に触れていないからだと思います。

ブログを読ませていただき、私も触発されました。歴史、社会への視点が私には欠けているので、とても勉強になります。
朗読も聴いてみたいです。また辺見庸さんの本を今日購入しました、これから読むところです。

これからもよろしくお願いします。

ブログを読んで下さり、ありがとうございます。
先ほど「水の透視画法」の記事にコメントを入れ、ツイッターでも紹介しておきました。
朗読もきいてみたいとおっしゃって下さったので、また近いうち企画してみようかなと思い立ちました。

ありがとうございます。

朗読、企画されたらききに行きたいです(でもちょっと遠いですね)。

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