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蝶の舌 La Lengua de las Meriposas

 1999年スペイン映画、ホセ・ルイス・クエルダ監督作品。

 主人公の少年モンチョの父親は共和派(人民戦線)を支持していたが、対立する勢力(フランコ将軍の右派)が町を占領すると(スペイン内戦の始まり)、主義より身を守ろうとする妻に同調し、共和派ではないふりをする。町の多くの人々と同じように。

 モンチョの大好きだった先生グレゴリオは、共和派ゆえに捉えられ、トラックに載せられる。広場を歩かされる共和派の虜囚に対し、民衆は「アテオ(不信心者)」「ロッソ(アカ)」「裏切り者」と罵声を浴びせる。モンチョの母親も(強く)、父親も(悲しげに)。自らの意に反して叫ぶ人の心はどれだけ引き裂かれただろう。モンチョも、母親から「あなたも言うのよ」と促され、先生の目を見て「アテオ」「ロッソ」と大きく叫ぶ。先生は何も言わずに見つめる。トラックが広場を出る。出るときに門の石積を崩すと、その石を拾った子どもたちが、やはり「アテオ」「ロッソ」と叫びながらトラックの虜囚たちに石を投げる。モンチョも、「アテオ」「ロッソ」、そして「ティロノリンコ(先生が教えてくれた求愛に蘭の花を運ぶ鳥の名)」「蝶の舌(先生に教えてもらった、顕微鏡で見るはずだった蝶の舌)」と叫ぶ。おそらく、「本当はあなたが好きなのだ」と心の中で叫びながら。(そこで映画は終わる)

 知ることのよろこび、考えることの大切さ、感情表現の素晴らしさを、先生は教えてくれた。先生は引退の日に、子どもたちに「自由に飛び立ちなさい」と言った。何かに縛られることなく、人は自由に生きるものだと。ある日、「人が死ぬとどうなるの?」と聞くモンチョに、先生は「あの世に地獄はない。地獄は人間が作り出すもの」と言った。「これは誰にも言ってはいけないよ」とも。

 その地獄に先生は巻き込まれる。しかし自由である。

 人の優しさ、悲しみを鮮明に画いている。光織り成す美しい映像がそっと寄り添う。いつまでも心に残る映画である。

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(蝶たち来ないかな) 

 

 

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