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社会のあり方

 今日(5月2日)の毎日新聞に掲載された2つの文章に、考えさせられた。

 先ず7面の野田正彰さん(精神科医・関西学院大教授)へのインタヴューより。

 〈「頑張ろう」と言っている人は、夫と子どもを失って一人でたたずんでいる人の顔を思いうかべて言っているんでしょうか。「頑張ろう」という言葉は「もう頑張れない」と思っている人には酷なメッセージで、「私はダメだ」と落ち込ませるだけ。悲しみの抑圧が進んでいるような気がします〉

 〈比較的元気な被災者ではなく、避難所で1人黙ってうつむいている人にこそ、目を向けなければいけません。再建や復興より前に、弔うこと、悲しみを見つめることが大事です。つらかったことは早く忘れて、元気を出して復興しましょう」というのは最悪のメッセージです〉

 〈自治体はしきりに「心のケア」を言いますが、「不幸は忘れて新しい町をつくろう」というのは、ケアどころか傷ついた心を再度大きくえぐるようなものです〉

 言われるように、「もう頑張れない」人に「頑張ろう」は酷だ。住めればいい、そこに何かしらの、人の支え合う共同体があればいい。なのに何を構想し、そのことで誰を切り捨てることになるのか、よく考えてみたら良い。高度経済成長期に、私たちは何を捨てて来たのか、もう一度考えてみたら良い。

 もう一つ、20面の鎌田慧さん(ルポライター)へのインタヴューより。

 鎌田さんは40年近く日本での原発建設に警鐘を鳴らし続けてきた。

 〈「どうせ高額なカネが落ちているんだろう」と高をくくる人間の性根が、鎌田さんには理解できない〉

 〈「首長たちは原発に伴うカネを『メリット』と呼び、安全は『国が保証している』と思考停止。政府と電力会社のモルヒネのようなカネ漬け攻勢です」。最終的にそのカネは、電気料金に上乗せされていく〉

 〈鎌田さんは原発の段階的な廃止を訴える10万人規模の集会を9月19日に都内で開く予定だ。大企業の労組は当てにしない。個人の参加に期待する。「これまで原発の建設と安全宣伝につぎ込んできた何兆円ものカネを今度は、自然エネルギーに特化する」〉

 原発を「安全」だと言い続けてきたこと、嘘を言い続けたことが、誤りなのである。「安全ではありませんよ、だからお金で保証します、良いですか?」と、なぜ説明しなかったのだろう。そして、より適切な電力供給方法を考え続ければ良いのである。

 この国には、「誰もが安心して暮らせる」という視点が欠落している。売られている商品を見れば、使う側より作る側の理屈が透けて見えるし、道路は歩行者より車に優しく、山道はどこまでも舗装されている。誰のどの都合で世の中はつくられているのか。

 効率を追求するのではなく、生きやすさを追求すべきである。それが成熟した社会である。そのためにはどこに目を向けなければいけないか。野田さん、鎌田さんは、一貫してあるところに目を向け続けてきたし、「思考」を続けてきた。そういう意思ある人の意思に深く共感することも大切なことだと思う。

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(路地裏に咲きました)

 

 

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