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ほほえみ

 大野悠(2010).詩集 ほほえみ.みずき書房

 ほほえみとは、頬がにっこりすること。この詩集を手にして、そういうことを想った。

 詩は、ある場所へと私たちを連れて行ってくれる。私たちの知らなかった、どこか懐かしい場所へ。

 大野さんの詩は、ある穏やかさ、優しさへと連れて行ってくれる。

 そこでさまざまな心に出会う。心たちはいちようにいのちを見つめている。記憶の中のいのちは心の中で生き続け、新しく出会ういのちは心に清冽な印象を与える。

 〈行きなさい、生きなさい、/いのちあるかぎり〉 道標

 〈僕の心が/消え去った幸せのかけらを/指でたどりながら/漂っていくのです〉 数える

 〈あ、高校生たちがハンドルを切り/緑の萌える土手の下を/銀輪をきらめかせながら/海の方向をめざして行く〉 橋の上

 〈この世とあの世が/同じ空の下にある/生きている人のたましいと/死人のたましいとが/声もなく響きあっている/ぼんやりとそんな気がした〉 ほととぎす

 〈暑い夏の 蝉の声が美しいのは/蝉の 激しい命への愛惜と/真剣に生きた子供のころの/汗や笑いが甦ってくるからだ〉 蝉の声

 どこまでも今があり、私はどこにでも存在し、過ぎ去ろうとする数多の思いを見つめつづけている。

 あたたかな眼差しの奥で、拭えない後悔と不意に訪れるよろこびを生きる私がいる。

 どこまでも心を砕く。そうすることが生であるかのごとく。

 大野さんの優しい心がそのまま現われたような詩集である。

031

(ほおべにみたい)

  

 

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コメント

どこまでも今があり…って言う詩が何だか好きでした
私もこの詩集、ぜひ読んでみたいです
あいかわらず文章がまとまらずすいませんcoldsweats01

大野さんの詩では、さまざまな情景や、そこで生まれていた思いが、多重映しになって、記憶が彩られています。
大野さんにとっての「今」は、だからどこまでも限りなく広がっている感じがします。
お貸ししますので、読んでみてください。

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