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よあけ

 ユリー・シュルヴィッツ 作・画  瀬田貞二 訳.福音館書店(1977)

 

   よあけ

 

 おともなく、

 しずまりかえって、

 さむく、しめっている。

 みずうみの きのしたに

 おじいさんとまごが もうふでねている。

 つきが いわにてり、ときに このはをきらめかす。

 やまが くろぐろと しずもる。

 うごくものがない。

 あ、そよかぜ……

 さざなみがたつ。

 しだいに、ぼおっと もやがこもる。

 こうもりが1ぴき、おともなく まいでる。

 かえるのとびこむおと。ひとつ、またひとつ。

 とりがなく。どこかでなきかわす。

 おじいさんが まごをおこす。

 みずをくんで

 すこし ひをたく。

 もうふをまいて

 ぼーとを おしだす。

 みずうみに こぎだす。

 おーるのおと、しぶき、みおをひいて……

 そのとき

 やまとみずうみが みどりになった。

 

      *      *      *

 

 静かな美しい絵本。引用文の1行が1頁に当たる。

 色調は、初めは暗く、しだいにうす明るくなり、

 「そのとき」の頁の右上がほのかにうすみどりになる。その感じと、次のページの大きなみどりがうれしい。

 「つきが いわにてり、ときに このはをきらめかす」の情景が美しい。

 この絵本を読んで育った子なら戦争などしない、と思わせる。

 そのような希いを、絵に表白したのかもしれない。

 思いを込めて、まだ見ぬだれかに向けて描く。

 内なる思い、希いを絵にすると、このような静謐になるのかもしれない。

 

 

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