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2009年10月

ひとさらい

 笹井宏之歌集(2008).ひとさらい.BookPark.

 NHKの番組で初めて笹井さんの歌に接したとき、この世のそこここに遍在している意識のようなものを感じた。その意識たちが歌をよんでいると。

 彼は、多くの純粋な意識を持つことで、永遠に触れようとしていた、触れていた。

 〈冬ばってん「浜辺の唄」ば吹くけんねばあちゃんいつもうたひよったろ〉

 意識は寄り添い、同じ時間をしばし過ごし、空に満ちる。

 〈天井と私のあいだを一本の各駅停車が往復する夜〉

 生きにくい世に言葉は必定。それを精錬することで、何かに出逢いたかった。

 言葉という場所。

 未知(他者)に出逢いたい意識たちの担い手になること。

 意識の閃き、その残像としての煌き。

 〈からだにはいのちがひとつ入ってて水と食事を求めたりする〉

 ある時ふと気づいて、足を止めてよーく見る、物たちの来し方と行く末を。

 それらがそれらでなかった時のことを、私は思い出したい。

 〈えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい〉

 何よりもそれが欲しい。心の栄養のようなそれが。

 

ひろがる思い

 W.ゴールディング『蝿の王』でサイモンを沖へ流したもの、無数の煌くものたち。

 煌くものたち、という思いについて。

 人が亡くなった人の思いを宿すときの、亡くなった人の思いについて。

 そのような、,数多の思いについて。

 それらは一様に、その思いにとっての他者に拡がろうとしている。

 未知に憧れるごとくに、癒しの触手のように。

 それらはどこから生じるか、なぜ生じるか。

 異界からの使者のようでもある、

 ある人はそれを天使と呼んだかもしれない。

 想起する者は、想起される物に促されて遡及する。

 そこに拡がる世界の不思議な豊穣さに惹かれる。

 思い出すためではあるが、ほんとうは、未知なるものを求めての想起かもしれない。

 開ける世界の先の暗闇と光、すべてを、無限と無を希求する営み。

 私たちの思いは、そのように拡がる。

 

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