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仕立て屋の恋 Monsieur Hire

 パトリス・ルコント監督の「仕立て屋の恋 Monsieur Hire」(1989)を観た。

 近所で起きた殺人事件の犯人と疑われるイール氏は、美しい音楽をかけ、正装をして、アパート向かいの若い女性の部屋を窓から覗き見るのを日課としていた。殺人事件の真犯人はその女性アリスの恋人だった。そのことを、イール氏は見て知っていたが、刑事には何も言わなかった。アリスに恋をしていたから。

 イール氏は近隣者たちから嫌われていた。「社交的ではないから」。彼自身、人間嫌いであった。孤独な中年男であった。ある日アリスはイール氏に覗かれていることに気づく。そこから物語は展開する。

 アリスはイール氏の部屋を訪れる。彼の優しさに接し、好意を抱く。誘う。だが、結局は恋人を逃がすために、イール氏を裏切る(彼を犯人に仕立てる)。

 刑事に問い詰められ、それでも真実を言わない彼は、自ら逃走し、屋根から足を滑らせ、落ちて死ぬ。

 

 イール氏の思いを映画は掬っている。人嫌いの恋は、具体的な愛に辿り着くことはなかったが、思いの純粋さが、さり気なく、布置された事物と共に鏤められた。

 部屋に転がり込んだ一個の赤いトマト、ハツカネズミの頼りない生、霧の風景、駅のレストラン。それらが彼の細部を彩る。

 保身によって生きるのではない、思いのために、それを保持しあたためようとして生きる。限りなく優しいお話しである。

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