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椿と烏

 通勤途中に広い田園地帯がある。今の季節は蓮華畑と空のビニールハウスが広がっている。その真ん中にぽつんと1本の椿があり、遠くからでもよく見える。近づくと、根元には真っ赤な花びらを敷きつめている。ある時何気なく通り過ぎようとしたら、黒い塊があるのに気づいた。烏が蹲っている。

 死んでいる。そこで力尽きたか、誰かが運んできたか。

 ふかふかの花びらの中で、丸くなって眠っているようにも見える。妙に印象に残った。色の対比によるのかもしれないが、それよりも、私には心安らぐ光景に見えたのである。

 椿が烏に何かを語りかけている、そんな印象。花と烏、2つの死を椿の木が見下ろしている。

 俄に黒い空から温かな雨粒が落ちてきた。

 〈「私の家では誰かが死ぬと決まって白い雪が降る」、というようなことを誰かが言っていた〉(詩心――永遠なるものへ.中西進.中公新書.2006.11)

 雪ではなく雨。

 私には、椿と烏の密かな語り合いを、空が聞きつけたように見えた。

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コメント

 呑好児こと且つウーパことK.Y.です。
 今日初めて読ませていただきました。
 これからvase jauneさんの哲学を勉強させていただきたいと思います。

 先日の句はここまで承知していませんでしたので、改めて、
 
 椿散っていのちの床となりにけり

有難うございます。コメント第1号です。
哲学というほどのものではないですが、これから、日々の雑感を綴っていきたいと思います。ご指導のほどよろしくお願いします。
俳句は季語とかあって面倒な感じがしますので、私のそれ風の句は1行詩だと思ってください。
「いのちの床」という言葉に深みがありますね。

凄い!vase jauneさんらしいブログですね♪
私も詠を自分で勝手に作るのが好きです!
たまに書きにきちゃうかも!
よろしくです(^^)ノ

sumisumiさん、ありがとうございます。
いつでも書きにいらしてください。

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